ギリシャの次はイタリア
ギリシャのパパンドレウ政権は辛うじて内閣信任案を可決され、欧州の包括支援策の受け入れの賛否を問う国民投票は回避されました。与野党は連立政権で合意し、パパンドレウ首相は辞任を余儀なくされ、次期政権のもと欧州連合(EU)などが求めてきた施策を遂行し、救済策も受け入れることで合意しています。これらEUサミット合意実施後、2012年2月19日頃に総選挙が行われる見通しとなっている。しかし、総選挙後の改革実施への不透明感は継続されることになるでしょう。目先の最悪の事態は回避されたわけですが、国際協調でユーロ圏の債務問題を本質的に解決することはできず、不透明感を払拭するには至っていません。
そのユーロ圏への不透明感の強さは、週末にフランスで行われたG20サミットでユーロ圏外からの欧州金融安定ファシリティー(EFSF)への参加がほとんど見られなかったこと、国際通貨基金(IMF)への資本増強に関しても追加資金拠出の合意が得られなかったことで窺えます。
※フランスのサルコジ大統領は新たな資金拠出の合意には来年2月までかかる可能性があるとの認識を示した
また、ギリシャの次に危機に瀕しつつあるイタリアに注目が集まっている。8日(木)にイタリア議会で2010年予算報告に関する議会の承認投票の実施を目前に、ベルルスコーニ首相率いる連立与党から最大20人の議員が離脱の構えを見せているというニュースが伝わり、否決の可能性があります。野党は承認が多数であっても内閣不信任動議を提出する意向を示しており、政局混迷は避けられないと思われます。ベルルスコーニ首相はIMFによる緊縮策実施の監視を受け入れたものの、イタリア10年国債利回りが8月に欧州中央銀行(ECB)が国債を買い入れ開始する前のピークを大幅に上回る水準(7日の10年債利回り6.68%)にまで上昇しています。これまでの財政難で支援要請に陥った国々と同様に、財政資金の市中調達が困難となる可能性のある7%の水準に近付きつつあります。イタリア10年国債は対ドイツスプレッドでも1996年初以来の水準を再び更新しており、周辺国国債の対ドイツスプレッドはイタリアを中心に拡大基調となっています。
ギリシャが一時的に小安状態を維持しつつある中、イタリアに対する懸念を背景としたリスク回避姿勢の流れが高まればドルと円は強く、クロス円は下落する可能性が高く、イタリアの対ドイツスプレッドが一段と拡大するようであれば、ユーロ円の下落幅は拡大する可能性があります。
米国でも特別委員会の財政赤字削減交渉が難航しています。11月23日(水)の期限までに追加措置で合意する可能性は低く、来年初めまでに法案が通っていなければ2013年から1.2兆ドルの自動歳出削減が実施されることになります。年内の格下げの可能性は低いものの今後も協議が難航すれば、2010年8月の合意が反故にされる公算も考えられるため、来年にかけて格下げリスクとドル安リスクを強めることになるでしょう。今のところ、ドル円でも目先は介入警戒感が根強く下値も限定されていますが、欧米の不安材料を背景とした株安や経常黒字の日本と恒久的な経常赤字の米国を比べても、円への避難通貨としての買い圧力は徐々に強まる可能性があります。
欧州の債券市場が相場をリード
先週、ドイツ10年国債入札が札割れとなったことを受けて、債務問題の影響が欧州随一の経済大国であるドイツにまで波及するのではという危機感が欧州の債券市場に動揺を与えました。しかし、先週末に国際通貨基金(IMF)がイタリアに対し、6,000億ユーロの支援を準備しているとの報道(伊スタンパ紙、その後IMFは否定)やドイツ・フランスが欧州中央銀行(ECB)による積極的な国債購入を可能にする安定・成長協定を計画とのニュース(独ウェルト紙)が、週初から市場を楽観的なムードでオープンさせています。
今回のニュースではその内容が確定している訳ではなく、これまで同様に詳細に至る段階で頓挫する可能性があり、その場合のネガティブなニュースが投資家のセンチメントを悪化させる可能性が十分あると考えられます。万が一、ニュース通りに事態が進んだとしても、詳細の取決めに相当の時間が掛かると思われることから楽観的な見通しは十分に気を付けなければなりませんね。
今週もユーロ圏各国では国債入札(月曜日はベルギー、火曜日はイタリア、木曜日はスペイン・フランス)が多く予定されており、その入札を無難に乗り切れるかどうかが見どころになるでしょう。無難に乗り切れた場合は短期的にリスク拡大投資が持続する可能性が高いですが、問題国の国債や銀行債の償還が増える来年1-3月期にマーケットが緊迫する公算もあり、ユーロはいずれ軟調に推移するとの考えに変わりはありません。
29日(火)にはユーロ圏財務相会議、30日(水)にはEU財務相会議が行われますが、12月9日(金)のEUサミットの事前会議との位置付けのため、為替(FX)相場への影響は限定されると思われます。ちなみに議題では、加盟国の財政規律強化のためのEU条約改正案やギリシャへの第2次支援と第5次送金の確認、そして欧州金融安定ファシリティー(EFSF)のレバレッジ拡大などが話し合われると予想されています。
米国でも主要な経済指標の発表が相次いで予定されています。週末には米国の10月雇用統計の発表を控え、市場予想は非農業部門雇用者数が12万人の増加、失業率は9.0%と雇用は少しづつ改善しているという印象を与える可能性があります。週末にかけては一時的な調整でドル買いが強まる可能性もあるので注意が必要です。また、全米小売業協会(NRF)によると感謝祭週末の小売売上高は前年比16%増加、過去最高に達しています。年末商戦の出足は好調となりましたがリセッション(景気後退)への懸念は残ります。年末商戦全体での伸びは小売業者の積極的な販売促進計画の継続が必要であり、その影響は株式市場を左右することになります。季節がら年末に向けてのドル需要も高まることになるため、ドル円は需給関係で短期上昇の可能性があります。
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